研究概要 |
新規摂食抑制蛋白,ネスファチン-1による摂食行動への影響を検討する一貫としてまずネスファチン-1の活性部位の同定を試みた。ネスファチン-1を3分割したベプチド(N-端側(N),中央(M30),C-端側(C)を合成し,それぞれのベプチドをICRマウスの腹腔内へ暗期直前に投与し,その後の摂食量の変動を検討することによりその活性部位の特定を試みた。その結果,中央部分のM30部分のベプチドのみがネスファチン-1と同様の摂食抑制作用を示した。この結果より,ネスファチン-1の活性部位はM30部分に存在することが明らかとなり,その後の検討はM30を用いて行った。本年度は,予備的実験としてM30の単回投与による代謝率に及ぼす影響を検討した。雄性ICRマウスにM30を腹腔内投与し,その後1時間の酸素消費量の変化を検討した。明期におけるM30の単回投与実験条件下においてはM30投与による明らかな酸素消費量への影響は認められなかった。ネスファチン-1の活性部位が明らかにされることにより,今後の創薬に向けて貴重なデータを得ることが出来たが,この活性ベプチドの腹腔内への急性投与実験結果では酸素消費量の増加作用が認められない可能性が示唆された。ネスファチン-1自体の生理的な意義を更に解明する目的により,今後,ネスファチン-1を欠損したマウスを用いて更なる検討を予定している。
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