研究概要 |
(目的)動物の概日リズム調節機構の分子レベルでの研究は複数の時計遺伝子群(Clock, Bmall, Per, Cry, DECなど)の解析により、この数年で著しく進展している。本研究はリズムを伴う代謝酵素の遺伝子転写調節におけるDEC1、DEC2やその他の時計遺伝子の調節因子としての役割を明らかにすることを目的とし、これら時計遺伝子の肝臓などにおける標的遺伝子と思われるコレステロール代謝酵素の遺伝子(CYP7A, CYP8B, CYP51, HMG CoA reductase)のリズム発現調節機構へのDECおよびその他の調節因子の関与を解析することにより、脂質代謝や糖代謝酵素系が関与するメタボリックシンドロームなどにおける時計遺伝子の持つ意義を明らかにすることを目指した。 (結果)マウスの肝臓などの末梢組織でのDEC1,DEC2発現をmRNAレベルで解析した。標的遺伝子としてCYP7A, CYP8B, CYP51, HMG CoA reductaseなどの概日リズムを示すことが知られている代謝酵素遺伝子を取り上げてその発現様式や発現量を解析した。一方、CYP7Aステロール代謝酵素遺伝子のプロモーターを用いて、ヒトHepG2またはマウスHepalclc7などの細胞株系でのルシフェラーゼレポーター解析によるDEC1, DEC2及びその他の時計遺伝子の関与を検討した。 DEC1,DEC2は中枢のみでなく、肝臓やその他の末梢組織においてリズムを持つ発現をしていた。これらの発現は時計遺伝子CLOCの変異体では大きく発現様式が影響を受けており、時計機構におけるCLOCKの重要性を示した。CYP7AのプロモーターはDBP、REV-ERBaなどによって促進的に、DEC2,E4BP4などによって抑制的に調節され、リズム性を持つ発現をすることが明らかとなった。さらにDec1プロモーターに対する核内受容体の調節機構を解析し、ステロールをリガンドとするLXRが促進的にDec1を調節していることを見いだし、脂質代謝経路との関わりを明らかにした。
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