pCREB発現をdominant negativeに抑制するCREBの変異体(mCREB)を組み込んだアデノウイルス(AV-mCREB-GFP)、対照としてGFPのみを組み込んだAV-GFPを、脳定位手術により分界条床核外側部に投与し、2週間後に実験に用いた。高架式十字迷路およびオープンフィールドテストをそれぞれ5分間行い、不安状態を調べたが、性差に影響はなかった。上記の観察の24時間後に、ラットの右後肢足底部に2%ホルマリン溶液50μlを皮下投与し。その後60分間、痛み行動(足あげ反応)を観察した(ホルマリンテスト)。その結果、雄性ラットでは、ホルマリンテストに影響を及ぼさなかったが、雌性ラットの場合、mCREBを投与した群は、雄性の群と痛み行動に差がなくなり、従って、痛み行動の性差は、この領域のCREBが担っていると考えられた。 分界条床核外側核のpCREB発現の定量解析を行うために、ラットの右後肢足底部に2%ホルマリン溶液50mlを皮下投与して、投与前0分、10分、30分後に、実験前日に留置したカニューレより致死量のペントバルビタールを投与し、直ちにマイクロウエーブ処理後(脱リン酸化を防ぐ)脳を摘出、分界条床核外側部を切り出した。定型的にウエスタンブロットにより、pCREBの発現変化を定量的に解析した結果、免疫組織化学の結果と一致して、10分後のpCREBの発現量が有意に増加した。
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