研究概要 |
我々が明らかにした,分界条床核外側核に雌性特異的かつエストロジェン依存性に誘導されるpCREBが,ホルマリンによる痛み誘発侵害刺激においていかなる役割を果たすかを明らかにするために,(1)pCREB発現とホルマリンテストの関係を,dominant negativeにCREBの機能を抑制する変異体,mCREBを分界条床核外側核にアデノウイルスを用いて発現させることにより調べる。さらに,ドーパミン系を中心に,いかなる機序で分界条床核外側核が性差発現に関与するのか明らかにする。そのために,(2)分界条床核外側核へのドーパミン受容体拮抗剤局所投与のホルマリンテストに及ぼす影響,(3)ドーパミンニューロンはA10領域のどこから投射されてくるのか、それに性差はあるのか、等を調べる。その結果,(1)雄性ラットでは、ホルマリンテストに影響を及ぼさなかったが、雌性ラットの場合、mCREBを投与した群は、雄性の群と痛み行動に差がなくなり、従って、痛み行動の性差は、この領域のCREBが担っていると考えられた。(2)ドーパミン受容体D1の選択的な拮抗剤の投与は雄性ラットにおいては影響を及ぼさなかったが,雌性ラット場合,雄性の群と痛み行動に差がなくなった。また,分界条床核外側部に投射するA10領域からのドーパミンニューロンの数は雌性ラット方が有意に多かった。以上の研究から,分界条床核外側部にpCREBが発現することにより雌性特有の痛み行動が出ること,その発現抑制にドーパミンが寄与していること,等が明らかとなった。したがって,これまで痛みの系とは無関係であった分界条床核外側核が様々な形で痛み反応に関与していることが性差の観点から明らかとなった。
|