視床下部外側野のCREBは、絶食や空腹時にリン酸化されるし、摂食行動の性差発現に重要な役割を演じていると考えている。その役割を明らかにする目的で、両側の視床下部外側野にGFPで標識した欠損型ヘルペスmCREB(CREBのdominant negatige体)を投与し、対照群には、欠損型ヘルペスGFPを投与した。その結果、24時間後には神経細胞に多くのGFP発現を認めたが1週間後には、ほとんど発現していなかった。従って、ヘルペスウイルスの毒性を考えられたため、より安定しているレンチウイルスを使うことにした。神経系に外来遺伝子を発現させるために、UbiプロモーターのFUGWを用いたところ、すくなくとも4週間後まで安定したGFP発現を認めたが、その発現までに約1週間を要することが明らかとなった。同時に、脳手術の影響で約2日間は摂食量が抑制されるが、約4日でもとに戻ることも明らかとなった。そこで1週間の摂食量と飲水量を測定ののち、レンチウイルスに組み込んだmCREBを投与し、1週間さらに摂食量と飲水量を測定して、その後、24時間の絶食、そしてその後に摂食量と飲水量を測定した。その結果、GFP投与対照群において、雄性ラットと比較して、雌性ラットでは24時間絶食後の再摂食が過食となり、約120%となったが、mCREB投与により過食分が雄性と同様になった。同時に、摂食量そのものが雌雄ともに約20%低下した。この結果から、視床下部外側野のCREBが摂食行動の性差発現に重要なばかりでなく、拒食症の性差発現をCREBが担っていることが示唆された。
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