平成19年度は、アポトーシスなどのI型細胞死とオートファジーなどのII型細胞死の両方を抑制することが知られているbc1-2置伝子を構成的に発現しているヒト肝癌細胞株HuH-7細胞クローン(HuH-7/bc1-2)と、その対照クローン(HuH-7/neo)を作製し、2つのクローンにおける遺伝子発現の網羅的解析を行い、本年度実施するGGAによる細胞死誘導機構の網羅的解析のための基盤とした。 1癌遺伝子bc1-2導入細胞とベクター導入細胞の遺伝子発現の網羅的比較解析 2つのクローンの遺伝子発現プロファイルをマイクロアレイにて解析した。12000個の遺伝子を検索した結果、およそ1000個の遺伝子発現が観察され、bc1-2導入細胞において197個の遺伝子がup-regulationされ、641個の遺伝子がdown-regulationされていた。中でも解糖系に関与するいくつかの酵素(Aldolase B、GAPDH、Enolase、Pyruvate Kinase、LDHなど)の遺伝子発現がbc1-2導入細胞においてup-regulationされていた。これらは、癌細胞に対する古典的な仮説であるワールブルグ仮説を支持するものであり、bc1-2遺伝子の関与が示唆された。 2癌遺伝子bc1-2導入細胞とベクター導入細胞のグルコース依存性の解析 HuH-7/bc1-2細胞は、HuH-7/neo細胞に比べて培地中のグルコースをより迅速に消費し、乳酸に変することが示された。したがって、培地交換を行わずに細胞を維持すると、HuH-7/bc1-2細胞の方がにグルコースを消費してしまい、細胞内ATPの枯渇を招いて細胞死することがわかった。
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