「ATF5mRNAは通常状態ではuORFからの翻訳によるATF5翻訳領域内でのストップコドンの発生によりNMDによる分解を受けている。一方、ストレス環境下では本来の翻訳開始点からの翻訳が起る事によるNMDシステムからの回避が起り、mRNAの安定性が増加する。その結果、ATF5の発現量が上昇し、標的遺伝子の発現が引き起こされ、ATF5を介したストレス応答が形成される。」という仮説を証明する事を目的とする。NMD経路において中心的な役割を果たす制御因子であるUpf1のSiRNAを細胞へ導入したところATF5 mRNAの発現量が増加した。また、Luciferase(LUC)レポータープラスミドのLUC cDNAの開始コドンより上流部分をATF5の5'UTRと交換したプラスミドのLUC構造遺伝子内の5'UTR内のuORFからの翻訳由来の終止コドンよりも55塩基以上下流に外来遺伝子のスプライシングのドナー、アクセプター配列を含むイントロン配列を挿入したプラスミドを作製し、動物細胞へ導入したところ、イントロンの挿入によりmRNAの分解が促進された。これらの結果からATF5 mRNAの発現にNMD経路が関与している可能性が示唆された。
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