研究課題
本研究の目的は、第1回国際線虫宇宙実験(ICE1st)において線虫を宇宙環境に滞在させることにより得られた新規の仮説「微小重力下では重力を感知する神経系が働かなくなり生体調節の乱れが生じ、老化制御に関わる機構が活性化するため、老化が遅延される」を検証し、老化制御に関わる遺伝子群を解明することである。本年度はICE1stにおいて、10日間の宇宙滞在により発現が低下した13遺伝子について、RNA干渉法(RNAi)による遺伝子発現阻害および遺伝子欠損変異体の寿命測定を行った。その結果、RNAiにより寿命が対照群よりも有意に延びる2遺伝子、および欠損すると野生体よりも有意に寿命が延びる3遺伝子を見つけた。これらの結果は、ICE1stにおいて宇宙軌道上に10日間滞在させた線虫の老化マーカーが遅延したことを裏付けるものである。宇宙における遺伝子発現低下が微小重力環境の影響による可能性を明らかにするために、地上で過重力を与えた際の遺伝子発現の変化をマイクロアレイ解析法を用いて検討した。まず線虫に遠心力による50Gの過重をかけ、老化マーカーとしてグルタミン遺伝子の繰り返し配列(CAG)を遺伝学的に導入した線虫を用いて、そのマーカーがどのように変化するかを調べた。過重力グループのポリグルタミン凝集体の数は液体培地、寒天培地を問わず対照群と比較して有意に多かった。この重力変化によって生じた表現型の違いを利用すれば、重力感知に関わる遺伝子の探索が可能となると期待された。DNAマイクロアレイ解析で、50Gの過重力を12時間かけた場合に発現が5倍以上増加した遺伝子は95個認められた。今後過重をかけてからの時間経過に伴う発現のパターンやRNAi解析等を用いた表現型の変化などを指標にして絞り込みと検証を行い、線虫の老化や重力感知に関わる遺伝子探索を行う予定である。
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Geriatrics and Gerontology International (in press)