研究課題
近年、生活習慣の変化などの影響で、虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性疾患が増加している。この動脈硬化症の要因として、脂肪代謝の異常に伴う血管平滑筋の脱分化が注目されている。通常、血管平滑筋は血管収縮や弾力性などの機能を果たしてが、この収縮型の血管平滑筋が形質転換により、収縮能のない脱分化(合成型)細胞に変化し、活発に増殖を繰り返しながら中膜から内膜へと遊走する。遊走した脱分化型平滑筋細胞はコレステロールを蓄積したマクロファージと共に血管内膜に蓄積する。最終的には動脈内膜に肥厚を形成し、その患部は動脈硬化症により狭窄そして閉塞する。ところが、この動脈硬化症を引き起こす血管平滑筋細胞の形質転換の分子メカニズムに関してはいまだに良くわかっていない。我々はこの脱分化のメカニズムを解明するために、血管平滑筋の脱分化に関わるマイクロRNAの検索を行ってきた。マウスの血管平滑筋由来のACO1細胞に引き続き、ヒトの正常血管平婿筋細胞からもマイクロRNAを単離し、それぞれのライブラリーを作成した。脱分化の際に変動するマイクロRNAの機能解析を行っているが、現時点では特許の関係上、詳細を記載できない。最終年度の報告書までには記載できるように申請したい。20年度はプロテオミクス解析に関しても多くの改良を施した。特に脱分化する前の細胞と脱分化後の細胞をABI社のiTRAQ試薬によりラベル化して解析する方法や機能プロテオミクスにおいてリン酸化ペプチドの効率的な分離方法および濃縮方法を検討した。その結果、チタニアなどのIMACとイオントラップ型の質量分析装置を用いる事により、効率的にリン酸化ペプチドを濃縮できる方法が確立できた。これらの成果を応用して最終年度は実際にどのような遺伝子が具体的に動いているのかに関してさらに研究を進めていく。
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