気管支喘息、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患は、その罹患率が近年増加の一途を辿っており、現代社会において重大な問題となっている。これまで、我々は、アレルギー疾患におけるプロスタノイドの役割について明らかにする目的で、プロスタノイド受容体欠損マウスを作製し、アレルギー喘息モデルを用いて検討を行い、プロスタグランジン(PG)D2がDP受容体を介してアレルギー増悪因子として働くこと、およびPGE2がEP3受容体を介して抑制因子として働くことを、マウスの個体レベルで明らかとしてきた。これら受容体は、いずれも気道上皮に存在することから、本研究では、アレルギー病態におけるプロスタノイドの作用機序について、上皮細胞に注目し解析することにより、これら受容体の新しいアレルギー治療薬の標的としての妥当性の評価を行う。本年度は、マウス気道上皮細胞cell line A549を用いた解析を行うと共に、気道上皮細胞のprimary culture系の立ち上げを行った。A549は、TNF-alpha+IL-4の刺激によりTARCを産生し、EP3作用薬は、濃度依存的にTARC産生を50%まで抑制した。さらに、より生体に近いモデルとしてマウス気道上皮細胞の初代培養系を立ち上げた。Air-liquid interphaseを利用した初代培養の系において、これらの細胞が、beta-tublinやkeratin等を発現しており、気道上皮細胞の特徴を有していること、また、EP3受容体、DP受容体を発現し、TNF-alpha+IL-4の刺激によりTARCを産生することが示された。これらの結果は、気道上皮が、Th2反応に重要と考えられているケモカインTARCの産生を通じてアレルギー反応を制御している可能性を示唆するものであると考えられる。
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