気管支喘息、アトピー性皮膚炎等のアレルギー性疾患は、その罹患率が近年増加の一途を辿っており、現代社会において重大な問題となっている。これまで、我々は、アレルギー疾患におけるプロスタノイドの役割について明らかにする目的で、プロスタノイド受容体欠損マウスを作製し、アレルギー喘息モデルを用いて検討を行い、プロスタグランジン(PG)D2がDP受容体を介してアレルギー増悪因子として働くこと、およびPGE2がEP3受容体を介して抑制因子として働くことを、マウスの個体レベルで明らかとしてきた。これら受容体は、いずれも気道上皮に存在することから、本研究では、アレルギー病態におけるプロスタノイドの作用機序について、上皮細胞に注目し解析することにより、これら受容体の新しいアレルギー治療薬の標的としての妥当性の評価を行うこととした。平成19年度は、マウス気道上皮細胞cell line A549およびマウス気道上皮細胞初代培養系を用いた解析を行い、TNF-alpha+IL-4の刺激によるTARCを産生が、EP3作用薬により濃度依存的に抑制されることを明らかとした。これらの結果は、気道上皮が、Th2反応に重要と考えられているケモカインTARCの産生を通じてアレルギー反応を制御している可能性を示唆するものであると考えられる。平成20年度は、マウスアレルギー性結膜炎モデルを用いた解析を行い、EP3作用薬が結膜上皮に発現しているEP3受容体に作用しケモカイン産生等を抑制することでアレルギー炎症を抑制することを明らかとした。これらの結果は、EP3作用薬のアレルギー治療薬としての可能性を示唆するものであると考えられる。
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