研究課題
基盤研究(C)
ニコチンによる依存性形成のメカニズム、なかでも、脳神経回路網のリモデリングについて検討する。神経伝達物質アセチルコリンの受容体は、主に副交感神経からの伝達を受容するムスカリニック・アセチルコリン受容体と、自律神経節や神経筋接合部での伝達を受容するニコチニック・アセチルコリン受容体の2種類に分けられる。脳内にはこれら両者が存在し、アセチルコリン作動性神経終末から分泌されたアセチルコリンにより制御を受けるとともに、喫煙によって血液脳関門を通過したニコチンの作用点ともなる。近年分子生物学の進歩により、脳内ニコチニック受容体の実体が同定されてきた。例えば、記憶の座である海馬の錐体神経細胞には、グルタミン酸を神経伝達物質とする興奮性シナプスが形作られている。海馬興奮性シナプスのシナプス前終末、そしてそこからの化学的シナプス伝達を受け取る樹状突起スパイン両側に、ニコチニック・アセチルコリン受容体の一種a7nAchRが存在する。これらのa7nAchRをニコチンにより刺激することにより、グルタミン酸によるシナプス伝達の効率が修飾される。しかしながらニコチン長期連用による神経回路網のリモデリングについては未知である。そこで(1)ニコチンを長時間作用させることによるスパインの形態変化をとらえる。次に(2)ニコチンによるシナプスのリモデリングが、脳内ニコチニック受容体を介するものかどうかを確認する。続いて(3)ニコチンによるスパインのリモデリングが、グルタミン酸によるシナプス伝達を介するものかどうかを検討する。さらに(4)ニコチンによるスパインのリモデリングが、いかなる細胞内情報伝達系を介しているか同定する。最後に(5)スパインのリモデリングを引き起こす運動機構が何かを、スパイン内アクチン細胞骨格を最初のターゲットとして突き止める。
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