α7ニコチン性アセチルコリン(α7ニコチン)受容体はおもに神経細胞に発現し典型的なイオンチャネルとして速やかな神経伝達を担うことが知られているが、ミクログリアに発現するα7ニコチン受容体はイオン透過性を示さずホスホリパーゼCの活性化を介して細胞内ストアからカルシウムを放出させる。これまでの検討により、ミクログリアのα7ニコチン受容体は神経型と同じ塩基配列を持つことが確認され、神経細胞とミクログリアにおけるシグナル特性の違いは受容体の構造に由来するのではなく、発現する細胞に特異的な仕組みが存在する可能性が示された。ラット脳ミクログリアにおいて、ニコチンによるα7ニコチン受容体活性化は一過性のカルシウム反応を引き起こすが、この反応はチロシンキナーゼ阻害薬で抑制された。さらに、チロシン脱リン酸化酵素の阻害薬(過酸化バナジン酸)はニコチン誘発カルシウム反応を著しく増強かつ持続させた。従って、ミクログリアにおけるニコチン誘発カルシウム反応は、チロシンリン酸化により促進的に制御されていることが明らかとなった。ミクログリアにはチロシンキナーゼのうちLynの発現が極めて高いことから、Lynを介したタンパク質チロシンリン酸化が重要な役割をはたすことが推測される。今回、マウス腹腔マクロファージにおいてもα7ニコチン受容体を介したカルシウム反応がチロシンリン酸化により調節されていることを確認した。また、αブンガロトキシンをリガンドとしてマウス腹腔マクロファージからα7ニコチン受容体蛋白が回収された。α7ニコチン受容体とLynとの相互作用について、さらにLyn欠損ミクログリアおよびマクロファージにおけるニコチンの反応について検討を進めている。
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