研究課題
前年度まではLithium等のGlycogen synthase kinase-3β(GSK-3β)阻害薬を用いて、培養副腎クロマフィン細胞系におけるインスリン受容体シグナル分子群の解析を行ったが、今年度は、炎症病態時のGSK-3β活性、およびそれに伴う受容体シグナル分子群の発現量および活性について、麻酔下に盲腸結紮穿孔術を施行した多菌性敗血症マウスモデルの各種臓器組織において、比較検討解析を行った。手術時からの時間経過に伴い、血中インスリン濃度は上昇、糖負荷試験では耐糖能異常といったインスリン作用不全を示すことから、炎症により各臓器組織においてインスリンシグナルが変動することが予測された。心臓、血管等の末梢の臓器組織においては、AktおよびGSK-3βのリン酸化レベルは低下していた。ところが、脳神経組織大脳皮質においては、逆にAktおよびGSK-3βのリン酸化レベルは増加していた。Akt、GSK-3βの蛋白質発現量には有意な変化を認めなかったが、インスリン受容体蛋白質発現量は増加していた。また、HE染色、TUNEL染色による各臓器顕微鏡観察では、末梢組織の肺組織では、肺胞壁の肥厚、炎症細胞の浸潤、アポトーシス細胞の増加等を認めたが、大脳皮質では、対照群と比較し、著名な変化を認めなかった。全身性炎症時には、糖尿病の既往がなくともインスリン作用不全の病態を呈し治療を困難にしている現実がある。インスリン受容体シグナル、特にPI3-K/Aktシグナル経路活性化は、抗炎症効果、臓器リモデリングに影響を及ぼすが、炎症時の脳神経組織においては、末梢臓器組織とは異なりGSK-3βはリン酸化/不活性化されており、脳神経組織をプロテクトする機構が生体には備わっていることが示唆された。
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http://www.med.u-toyama.ac.jp/pharma/index.html