本研究は血管平滑筋におけるギセリンの機能解析を行うことが目的であるが、特に、血管の収縮に深く関係しているカテコラミンが、これまでに我々が報告している肥厚平滑筋で発現が増大しているギセリンの発現に及ぼす影響を明らかにすることを主な研究対象としている。このために、ラット由来の動脈および静脈の血管平滑筋の培養を行い、その培養方法を確立し、ギセリン遺伝子の導入と細胞株化を行っている。また、伸展刺激によるギセリンの発現変化、ギセリン発現量と伸展反応の差異を検討するために伸展培養に適する培養条件決めを行った。現在2者ともに継続実験中である。一方、平滑筋モデル細胞であるA10細胞についても、同様の実験を行った。さらに、α受容体刺激薬、β受容体刺激薬によるこれらの細胞の刺激を行い、ギセリンの発現を定量的PCR法により検討している。 また、血管系細胞におけるギセリンの発現局在を確認するために、動脈、毛細血管、静脈の免疫電顕を行っている。DAB法および、金コロイド法を用いて神経系に分布する血管の検討を行ったが、この結果、血管内皮における発現が知られていたが、今回、内皮の基底膜側および、側方における発現が確認できた。 また、皮膚移植の際に、移植片の生着には血管組織の確立が不可欠であり、これには移植組織片内での新生血管が形成と、周囲からの進入が考えられているが、今回、血管をギセリンを用いて追跡を行った。その結果、周囲から移植片内に進入する血管が確認できた。
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