本研究は血管平滑筋におけるギセリンの機能解析を行うことが目的であるが、特に、血管の収縮に深く関係していろカテコラミンを中心として、血管平滑筋の収縮を制御している各種分子の、これまでに我々が報告している肥厚平滑筋で発現が増大しているギセリンの発現に及ぼす影響を明らかにすることを主な研究対象としている。研究には主にマウスギセリンの上流域1.5kbpを組み込んだルシフェラーゼレポータープラスミドを用いた転写活性で検討を行った。細胞は、ラット平滑筋由来のA10細胞と、ラット大動脈由来の初代培養細胞を用いち。A10細胞を用いた実験において、カテコラミン受容体の中でもα受容体刺激薬であるフェニレフリンによってギセリンの転写活性の上昇を認めたほか、アセチルコリン受容体刺激薬であるカルバコールによる発現抑制が認められた。一方。残念ながら、初代培養細胞系においては以上のような明らかな発現変化は確認できなかった。 もう一つの検討課題である各種増殖因子の影響については、これまでに明らかとしているIGF-1に加えて、FGFによる発現増大が確認できた。また。この他に、カテコラミンと同様に血管を収縮させる物質ついてもギセリンの発現に及ぼす影響を検討したが、エンドセリンによるキセリンの発現増大が明らかとなった。 一方、これまでに報告しているA10細胞におけるギセリンの発現を増大させるIGF-1が、カテコラミン産生細胞であるPC12細胞におけるギセリンの発現を増大させることが明らかとなった。その制御機構に関しては、A10細胞とは異なる系の存在が示唆された。
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