本研究は、細胞膜型アミノ酸センサーの分子実体を解明し、その代謝調節における役割を明らかすること目的とするものである。平成20年度は、細胞膜型アミノ酸センサーの分子実体解明と細胞内シグナル機構との連関について、以下の成果を得た。(1)培養細胞を用いた細胞膜型アミノ酸センサーの解析。アミノ酸枯渇状態で維持したHEK293T細胞は、ロイシン添加に対して、細胞増殖応答を示すが、これはアミノ酸トランスポーターのインヒビターBCHにより抑制されなかった。同様に、ロイシン添加は、p70S6kinaseのリン酸化を亢進させるが、これはBCHにより抑制されなかった。従って、HEK293T細胞においては、細胞膜型アミノ酸センサーが細胞のアミノ酸応答に主要な寄与をしていることが示された。数種の細胞株において同様な検討を行ったところ、p70S6kinaseのリン酸化がBCHにより抑制される細胞と抑制されない細胞に分類され、細胞内センサーと比較しながら細胞膜型センサーの解析を進めるモデル系を確立できた。(2)アミノ酸によるCa^<2+>動員の解析。アミノ酸枯渇状態で維持したHEK293T細胞は、ロイシン添加により細胞内Ca^<2+>動員が起こることをCa^<2+>感受性色素を用いたCa^<2+>イメージングにより明らかにした。アミノ酸によりCa^<2+>動員が起こることは、細胞膜型センサーがGタンパク質共役型受容体であることを示唆するものである。Ca^<2+>動員と上記p70S6kinaseのリン酸化との関連性については今後の検討課題であるが、新しいシグナル系の存在を強く示唆す成果である。(3)アフリカツメガエル卵母細胞を用いた機能発現。飢餓状態で維持したHEK293細胞からpoly(A)^+RNAを抽出し、アフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、膜電位固定下で細胞外からロイシンを与えると内向き電流が観察された。この電流の濃度依存性が確認され、細胞膜型アミノ酸センサーがロイシンを感知したことによる電流であることが示された。
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