BCR/ABLは、恒常的に活性化された非受容体型チロシンキナーゼであり、細胞の増殖を促進、アポトーシスを抑制して慢性骨髄性白血病を惹起する。本研究では、分子シャペロンによる発癌原因分子チロシンキナーゼのキナーゼ領域依存性分解制御について検討し、以下の結果を得た。 1.慢性骨髄性白血病原因分子BCR-ABLのキナーゼ領域依存性蛋白質分解の制御には、熱ショック蛋白質(Hsc70)のコシャペロンが重要な役割を演じていることを明らかにした。さらにキナーゼ領域の種々の変異体発現系を構築して、分解に必須の領域とキナーゼ活性との関係について検討を進めている。 2.BCR-ABLは、キナーゼ領域以外にも分子シャペロンによる蛋白質分解に重要な領域が存在する可能性を明らかにした。 3.ユビキチンリガーゼであるc-Cblによる分解は、キナーゼ領域依存性であり、両者のリン酸化が分解制御に関与し、双方向のシグナルによりお互いの分解を制御していることを明らかにした。 4.BCR-ABLによるc-Cblのリン酸化部位と分解との関係についてさらに詳細に検討するために、c-Cblの種々のリン酸化部位変異体およびBCR-ABLの変異体を作製して検討中である。 5.BCR-ABL分子標的薬であるイマチニブは、BCR-ABLのキナーゼ領域に特異的に結合し、キナーゼ活性を阻害するが、BCR-ABL蛋白質発現の増加が薬剤耐性機序の一つである。イマチニブによる蛋白質の安定化について、さらに詳細な検討を進めている。
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