前年度の受容体発現安定細胞を元とした、不飽和脂肪酸受容体の薬理学的検討の継続を行い。また平行して本研究の主題であるGFPを利用した水素イオンプローブによるミトコンドリア機能の可視化研究を行った。 不飽和脂肪酸受容体はその種類により、炭素鎖の長さによる選択性の違いが知られている。また不飽和鎖のはいる位置ならびcis体trans体などの多様性を有している。薬理学的検討においては、天然に存在する不飽和脂肪酸の炭素鎖の長さ、不飽和度ならびに光学異性体を系統的に用い、各種不飽和脂肪酸受容体間での薬物特性に関して検討を行った。対象として、本研究で作成した不飽和脂肪酸受容体安定発現HEK293細胞ならびに不飽和脂肪酸受容体GPR40を内因性に発現しているmin6細胞並びに、不飽和脂肪酸受容体GPR120発現細胞であるSTC1細胞を用い、受容体刺激により引き起こされるカルシウム反応を指標に、比較検討を行った。近年栄養学的に不飽和脂肪酸の構造によりメタボリックシンドロームや心疾患に対する影響が数多く報告されその分子メカニズムの解明が急がれている。これら疾患の発症メカニズムにつながる細胞生物学的知見が得られており、現在投稿準備中である。 ミトコンドリア機能可視化検討に関しては、光学系の至適化ならびミトコンドリアでの蛍光の充分に明るい安定細胞が得られこれらを用いることにより現在各種正常刺激によるプローブの評価を行っている。またミトコンドリアプローブの局在に関して、ミトコンドリアマトリックスか膜間腔かでその反応が反対方向に動くことが推定される。今回用いた局在シグナルは、マトリックスに移行することが報告されている。しかしながら、グルコース負荷による反応並びに電顕での検討では膜間腔への局在が示唆されており、より子細なプローブ局在部位の同定を現在遂行中である。
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