申請者は、脳血管前駆細胞的な分化ポテンシャルを有する多能性神経幹細胞を同定することを目的として本研究を計画するに至った。本研究計画の初年度では、CD44+CD90+細胞が、血管前駆細胞的な発生ポテンシャルを持ち合わせた多能性に富む神経幹細胞である可能性を明らかにした。そこで、平成20年度では、その細胞の性質をさらに検討するため、NG2の発現との関連性を検討した。NG2は、1回膜貫通型の糖タンパク質で、胎生期や成体の中枢神経系に広く発現していることが知られている。中枢神経系のNG2+細胞は、オリゴデンドロサイト前駆細胞と考えられていたが、最近の報告では、オリゴデンドロサイト以外のニューロンやアストロサイトなどの中枢神経系の細胞にも分化しうる多能性のグリア細胞として注目されている。セルソーターによって神経幹細胞を分析したところ、CD44+CD90+細胞集団の一部が、NG2を共発現していた。ニューロスフィア形成能を調べたところ、NG2+細胞はニューロスフィア形成能を有していた。神経系への分化能を調べたところ、NG2+細胞はMAP-2陽性のニューロンとGFAP陽性のアストロサイトに分化することが明らかとなった。そして、管腔形成能にっいて調べたところ、NG2+細胞は管腔構造を形成し、その長さと面積はNG2-細胞に比べて増大していた。以上の知見より、NG2+神経幹細胞が多分化能を有し、血管のモデル構造である管腔構造を形成することが明らかとなった。
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