1. Cyp26b1の過剰発現とホーミング受容体の発現制御の関連の解析 レチノイン酸代謝酵素であるCyp26b1の発現が、小腸ホーミング特異性の賦与にあたえる影響を検討するため、外来Cyp26b1遺伝子を過剰発現させ、それによってホーミング受容体の発現がいかに変化するかを調べた。まず、マウスから単離されたナイーブT細胞にCyp26b1遺伝子を過剰発現させる発現ベクターを導入し、その細胞をレチノイン酸存在下で活性化させ、ホーミング受容体CCR9の発現を観察した。その結果、Cyp26b1を過剰発現しているT細胞では、通常に比べ、CCR9の発現が有意に低下したことがReal-time PCRの解析結果明らかになった。さらに、FACSを用いたタンパク質レベルの解析でも、Cyp26b1を過剰発現しているT細胞では、CCR9の発現が低下していた。 2.内在性Cyp26b1遺伝子の発現抑制とホーミング受容体の発現制御の関連の解析 上記の結果より、外来Cyp26b1遺伝子を過剰発現させることで、CCR9の発現が低下することが明らかになった。次に内在性Cyp26b1遺伝子の発現量を変化させた場合に、CCR9の発現にどのような影響が与えられるかを検討した。T細胞内では、Cyp26b1遺伝子は活性化と同時にレチノイン酸刺激を与えられることでその発現が誘導される。このときCyp26b1のmRNAをターゲットとするsiRNA (Cyp26siRNA)を導入することで、内在性Cyp26b1の発現を低下させることを試みた。その結果、Cyp26siRNAを導入したT細胞では、コントロールsiRNAを導入したT細胞に比べ、レチノイン酸によるCCR9遺伝子の発現誘導が減弱した。
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