研究概要 |
本研究の目的は,社会的な問題に発展しているメタボリックシンドロームに対する新たな治療標的として,転写因子Nrflに着目し,その脂質代謝にかかわる遺伝子発現制御ネットワークを解明する点にある。具体的には、1)Nrflの脂質代謝に関わる標的遺伝子を明らかにすることで,Nrfl遺伝子破壊マウスの肝臓で脂肪が蓄積する原因を探る。2)Nrflの転写活性を制御するシグナルとし,Nrflタンパク質の安定化をもたらすシグナルを同定するという目標を掲げている。本年度の研究成果は、1)に関しては遺伝子破壊マウスの肝臓RNAを用いたマイクロアレー解析を行い、Nrfl欠失による遺伝子発現の変動を観察したところ、脂質代謝関連の遺伝子は総じて誘導されていることを明らかにした。Nrflは転写活性化因子であるために、欠失により発現減少した遺伝子が直接的な標的遺伝子であることが考えられるが、現時点でどの遺伝子が相当するのか不明である。あるいは、Nrflは通常脂質代謝に関わる他の転写因子と相互作用することで抑制しているようなクロストークも示唆された。一方2)については、Nrflは通常タンパク質分解されていることを、内在性因子の解析で明らかにした。今後は、このタンパク質分解機構を解除するストレスの同定が重要であるため、これも標的遺伝子の機能から予測できるのではないかと考え、解析を行っている。
|