研究概要 |
RNA干渉は標的遺伝子配列に対応した短い2本鎖RNA(short interfering RNA, siRNA)による遺伝子発現抑制法である。近年、siRNAは標的遺伝子の発現抑制効果の他に、免疫賦活効果(I型インターフェロン=IFNや炎症性サイトカインの誘導)を示すことが報告された。この免疫賦活活性は『特別な塩基配列=IFN inducible sequence (IIS)』を有するsiRNAのみが持つ。以下、これをsiRNA(IIS)と略す。本siRNA(IIS)を利用した癌治療法に関して、本年度の成果を下記に示す。免疫賦活siRNAによるI型IFN誘導を利用したヌードマウス癌治療(in vivo実験)昨年度までに確立したin vitroの実験成果をマウス実験に応用して抗腫瘍効果を得た。 (1)樹状細胞を使った癌治療(細胞療法) ヌードマウス鼠径部皮下に移植して作成した腫瘍(=ヒト前立腺癌由来PC-3腫瘍)に対して、IFN誘導済み樹状細胞(pDC)を注入した。その結果、腫瘍のアポトーシス誘導(TUNEL法による)に成功し、有意な抗腫瘍効果を得た。 (2)非免疫細胞(線維芽細胞)に対する癌治療 ヒト癌細胞3種(腎癌ACHN、結腸癌COLO201、皮膚黒色腫COLO800:いずれも線維芽細胞由来の癌)を各々ヌードマウス皮下に移植し、腫瘍を作成した。これらの腫瘍に対して、治療実験を試行した。即ち、IFN誘導を起こすsiRNA(siRNA-IIS)を腫瘍に直接注入することにより、有意な抗腫瘍効果を得た。抗腫瘍効果の作用機序が、これらの癌細胞において誘導されたIFN-βによるアポトーシスを介したものであることを証明した。
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