研究概要 |
サイトカイン情報伝達分子gp130を介するNLKの活性化に至る経路並びに基質となる分子群を見いだすためにプロテオミクス的な手法による検索を試みた。NLKにタグを付加した形で発現可能な細胞株を作製した。結合蛋白を精製後,プロテオミクス解析を行った。見いだされたキナーゼの一種は、免疫沈降実験の結果、NLKやStat3と結合することが明らかになった。Stat3の機能に与える影響を検討するためにshRNAによりノックダウン細胞の作製を試みたものの十分に発現レベルを低下させた細胞を得ることができなかった。そこでキナーゼ活性を低下させた変異分子をドミナントネガティブ体として発現させた細胞を作製し検討したところ、Stat3の機能を部分的に抑制することが確認された。miRNAを用いたKnockdown法による確証実験、また構造的にファミリーを形成する分子群の関与についても検討中である。 見いだされた分子群の制御が、がん化抑制に有用かを検討するため、正常繊維芽細胞におけるgp130-Stat3経路の位置づけを再検討した。その結果、持続的なgp130シグナルの活性化が増殖抑制を導くこと、Stat3がその際に重要であることを明らかとした(学会発表。論文投稿中)。現在、この系におけるStat3の機能に影響を与えるNLKや結合分子群の位置づけを検討中である。これらの分子の中でサイトカイン特異性を決定する分子を明らかにできれば、サイトカインシグナルの新たな分子標的の候補となる可能性が考えられる。
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