本研究では、高率に神経へ分化する神経幹細胞のマーカーを同定することによって分化傾向の違う神経幹細胞の精製を目指すものである。当該年度では、ヒト神経幹細胞を様々な細胞表面特異的抗原に対するモノクローナル抗体で染色後、サブポピュレーションをフローサイトメーターにより分離した。今回CD133陽性細胞の中でもCD24陰性細胞が、CD24陽性細胞やフローサイトメーターで分離していないヒト神経幹細胞に比べて自己増殖能に優れていることをATPアッセイ法、ニューロスフェア形成能アッセイ等にて明らかにした。さらに、これらフローサイトメーターで分離した細胞を分化培地にて培養したところ、CD133陽性、CD24陰性細胞に比べて、CD133陽性、CD24陽性細胞の方がよりβ-III-Tubulin陽性ニューロンへの分化能を示した。これらのことから、CD133陽性細胞、CD24陰性細胞が未分化な培養ヒト神経幹細胞のマーカーとして有用である一方、CD133陽性、CD24陽性細胞が効率のよいニューロンへの分化につながるマーカーとして有用である可能性が示唆された。また、増殖・分化能がニューロスフェアの培養条件によってさらに変化する可能性も考えられるため、培地、酸素分圧などの検討を行った。マウス神経幹細胞では低酸素培養下で増殖・分化の亢進がみられたが、ヒト神経幹細胞では通常酸素培養と差がみられなかったことからヒト神経幹細胞とマウス神経幹細胞では異なる酸素応答性を有すると考えられる。
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