研究概要 |
ヒト糖輸送体は種を超えた共通のスーパーファミリーMajor Facilitator Superfamily(MFS)に属する。酵母Saccharomyces cerevsiaeのMFSに属する2種の糖輸送体、高親和性糖輸送体Hxt2と低親和性糖輸送体Hxt1の網羅的なキメラ解析から、高親和性糖輸送に必須のHxt2の5個のアミノ酸を同定し、さらに、この5個のアミノ酸を各々他の19個のアミノ酸で置換し、輸送活性を調べた。7番目の膜貫通領域にあるAsn-331を置換した変異輸送体のみが、糖輸送の親和性が幅広く変化し、Asn-331が糖輸送の親和性決定を担っていることを示唆する(J.Biol.Chem.282,13146-13150,2007)。 Hxt2のAsn-331に対応するGLUT1のIle-287を他の19個のアミノ酸に置き換えた変異輸送体を作成し、糖輸送のkinetics(Km,Vmax)を解析したところ、様々な親和性を示した。Ile-287がHxt2の場合と同様に、親和性決定のkey residueであることを示唆する。変異輸送体への阻害剤(細胞質側に結合部位があると考えられているCytochalasinB、細胞外に面した結合部位があると考えられているPhloretin)の効果の解析から、Ile-287が細胞外に面した結合部位かその周辺に位置していることが明らかになった。また、このアミノ酸は、大腸菌のMFSに属するGlpT輸送体の3次元構造をtemplateとしたhomology modelで、中央のporeに面し、砂時計の形状をしているpathwayの一番狭くなっているところに位置していた。糖輸送体の構造と機能に関する新しいデータが得られた(Biochim.Biophys.Acta Biomembranes,2009in press)。
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