赤血球は日数を重ねるとともに変形能が低下し脾洞内皮細胞の間隙を通過できなくなり、マクロファージに貪食されることで寿命を全うする。本研究は、「核」をもたないことから「アポトーシス」は起こらない赤血球の寿命がほぼ正確に120日に定められている要因として、赤血球変形能の維持を担う膜骨格蛋白質スペクトリンの時間依存的、非可逆的な糖化修飾(AGE化)が赤血球寿命を定めているとの独自の仮説を検証することを目的としている。この仮説は同一環境にあるヘモグロビンが糖化修飾されるという事実により支持されると考えた。昨年度は、1)AGE化はリボース(五単糖)の方がグルコース(六単糖)より速くかつ強く引き起されること、2)赤血球細胞においてはグルコースの共存で抑制されること、3)グルコースの共存の効果はNaFで解糖を阻止すると認められなくなること、4)そのメカニズムは、グルコースとの競合ではなく代謝が進行し細胞内ATP濃度を維持することが重要であることを明らかにした。また、スペクトリンのペントシジン化に伴い、赤血球膜の変形能が低下したことから、本年度は、スペクトリン分子内架橋(Lys-Arg)部位の同定を進めることとした。リボース処理した赤血球よりスペクトリンを精製し、リジルエンドペプチダーゼ分解により生じたペプチド断片をHPLC法で分離・解析、トリプシンによる限定分解して生じたペプチド断片をSDS-PAGE、イムノブロットによる抗体反応で解析した結果、スプクトリンβ鎖の17個存在するリピートドメインの内、現在、第2と第4リピートを含む断片内に分子内架橋部位(ペントシジン化)部位が存在することが明らかとなった。これらの部位は膜のセリンリン脂質との結合ドメインであり、今後、これらのリコンビナントおよび合成ペプチドを用いて、細胞内ATP濃度によりペントシジン化が調節されるメカニズムについて検討する。。
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