研究概要 |
1. siRNA依存性のPKU-βの枯渇細胞(MCF7)では、これまで中心体の移動抑制のみを観察していたが、一見中心体が正常に動いたと思われるM期の細胞について、さらに検討すすめた結果、高い頻度で染色体の不均等分裂が誘発されていることが明らかにされた。 2. PKU-β枯渇細胞のMRLCのリン酸化をウェスタンで調べると、正常細胞に比べ50%近く減少していた。蛍光抗体を用いた顕微鏡で観察するとさらに顕著で、M期前期から中期細胞のシグナルはほとんど観察されなかった。 3. M期中期以前の細胞における内在性のMRLCのリン酸化局在場所をリン酸化抗体で調べたところ、M期前期において中心体内で強いシグナルが観察された。 4. ミオシンの軽鎖MRLCのT19D,S20Dの変異遺伝子(偽リン酸化体)をPKU-β枯渇細胞に導入したところ、中心体不分離の細胞はほとんど観察されなかった。さらに中心体が正常に動いたと思われるM期終期の細胞をピックアップしその染色体を調べてみたところ、染色体は均等に分配されていた。 5. 以上のことから、PKU-βはM期前期で中心体においてMRLCのT19とS20のリン酸化を誘導し、それにより染色体の移動と均等分裂を支配していることが示唆された。
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