昨年度の研究でニューログリカンC(NGC)がインテグリン、受容体様タンパク質チロシンホスファターゼ・ゼータ(PTPz)さらに低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)ファミリーと結合しミッドカイン受容体複合体を作ることが判明した。そこで、PTPzとアルファ6インテグリンを共に発現しているB104細胞にNGCcDNAをトランスフェクトした。このトランスフェクトされた細胞にミッドカインを反応させると75kDaタンパク質のリン酸化が増大し、パキシリンのリン酸化がシグナルを伝えている可能性が生じた。また、この細胞にミッドカインを結合したビーズを接触させ、PTPzとNGCに対する抗体を用いた2重染色によって調べると、PTPzとNGCが共存する部位が生じたことが明らかになった。アルブミンを結合したコントロールのビーズではこのような現象は起こらなかった。すなわちNGCを含む受容体複合体の形成はリガンドであるミッドカインの存在によって促進されることが分かった。ミッドカインの受容体になると提唱されているALKチロシンキナーゼはミッドカイン・アフィニティー・カラムに弱くしか結合しなかった。しかし受容体複合体成分のインテグリンなどと複合体を作ることが免疫沈降実験によって判明した。ALKは直接ミッドカインと結合するのではなく、受容体複合体中にリクルートされシグナルを伝える分子の一つであると示唆された。いっぽうマウス胎児仔脳のミッドカイン結合タンパク質を解析すると、新たな細胞膜成分と共に、タンパク合成に関与する成分が見出され、細胞質でのミッドカインの働きについて、重要な手がかりが得られた。
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