研究課題
FACT複合体を構成するSPT16およびSSRP1に関して、293細胞などの培養細胞に単独で強制発現させることはできず、両者を発現させることが必要であった。強制発現させたFACT複合体の多くは、核より細胞質に多く局在した。興味深い点は、GATA3を同時に発現させると、GATA3はFACT複合体と結合し、3者は核に多く局在した。このことから、GATA3がFACT複合体を核に移行させる機能を持つことが示唆された。さらに染色体上のGATA3が結合する領域にFACT複合体をリクルートしているのか、クロマチン免疫沈降法を用いて検討中である。T細胞活性化とTh2分化誘導にともない、RNAポリメラーゼが、染色体上にリクルートされるが、GATA3結合領域近傍に強く結合していることを示唆する結果を得た。FACT複合体とRNAポリメラーゼを染色体上にリクルートし、non-coding RNAの転写を誘導することに、GATA3が関与する可能性が考えられた。T細胞活性化とTh2分化誘導にともない、Th2サイトカイン遣伝子をコードする領域の脱メチル化が誘導される。末梢T細胞に比べて、胸腺で成熟し、まだ末梢に移動していない時点のT細胞では、脱メチル化がより早く、より強く誘導されることを見出した。この結果として、胸腺由来T細胞のサイトカイン産生量は末梢T細胞に比べて高いこと、また本来、産生が抑制されるサイトカイン、たとえばTh2細胞のIFNgの産生が亢進し、サイトカイン産生パターンの特異性が損なわれることを見出した。このような胸腺由来T細胞の特徴は、新生児T細胞の特徴と類似しており、成獣においては、T細胞が胸腺から末梢へ移行する際の分化過程として、サイトカイン遺伝子発現能の抑制があることを明らかにした。胸腺由来T細胞の脱メチル化は、刺激後急速に誘導される。細胞分裂をおこす前の細胞群を分離し、脱メチル化の状態を解析したところ、すでに誘導されており、DNA複製に依存しない脱メチル化の誘導であることが示された。胸腺由来T細胞では、Th2サイトカイン遺伝子領域に、メチルシトシン結合タンパク質MBD2の結合が見られ、脱メチル化の誘導において、MBD2が関与する可能性が示唆された。
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The Journal of Immunology (印刷中)
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