膵β細胞小胞体ストレスおよび酸化ストレス応答の特徴の解明 昨年までに、同定した新たな小胞体ストレス応答分子の機能解析を進めている。膵β細胞株MIN6細胞は核酸の導入効率が低く、RNAi法により目的遺伝子の発現を抑制させることが容易ではない。そこで、shRNAを発現する形質転換株を作成する必要がある。しかし、長期にわたるshRNAを発現によって目的遺伝子の発現を抑制させた場合、その直接効果とともに2次的効果が加わり、しばしば実験結果の解釈が難しくなることがある。この問題を克服するためにはshRNAの発現を薬剤誘導的に短期なものとすることが望ましい。そこで、shRNAを発現させるpolIIIプロモーターにテトラサイクリン・オペレーターを組み込んだもののうちMIN6細胞での活性が十分高いものの選択を行った。また平行してTet Repressorタンパクを高発現するMIN6細胞の形質転換株を作成した。この両者を用いることによって、目的遺伝子の発現を薬剤誘導的に抑制するMIN6細胞形質転換株を得ることが可能となった。 さらに、翻訳抑制因子4E-BP1の発現を11種類の培養細胞株で検討したところ、MIN6細胞以外の細胞株では、小胞体ストレスによる4E-BP1の発現亢進が認められなかった。Eif4ebp1遺伝子の様々なセグメントを組み込んだルシフェラーゼレポーターを用いた解析により、多くの培養細胞株では、ATF4によるEif4ebp1遺伝子転写活性化が小胞体ストレス下で阻害されていることが明らかとなった。 また、酸化ストレスによるJNKの活性化が小胞体ストレスによるIRE1-XBP1経路の効率を修飾することを見出した。
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