研究概要 |
ヒト高分子キニノーゲン・ドメイン5由来ペプチド(8〜15残基のペプチド)による,血漿タンパク質ビトロネクチンに対するヒト乳ガン株化細胞(MAD-MB231)の接着・走化性・マトリゲル浸潤をそれぞれ阻害する現象が,マウスメラノーマ株化細胞(B16-F10)やヒト骨肉腫株化細胞(MG-63)でも観察された。さらに,MG-63細胞で接着・走化性因子としてコラーゲン・タイプIを用いた実験でも,同様の結果が得られた。この結果は。ドメイン5由来のHis-Gly-Lysモチーフ(HGK-配列)を含む8残基ペプチドの持つ細胞の接着・走化性・マトリゲル浸潤の阻害活性が,ビトロネクチンレセプター(インテグリンαVβ3/β5)とコラーゲンレセプター(インテグリンα1/α2β1)を介する機能を阻害していることから。それぞれのインテグリンに直接作用するのではなく,別のレセプターなどを介して阻害している可能性が考えられた。 ドメイン5(94残基)で見られたマトリゲル上での血管新生阻害は,ペプチド(8〜15残基)にしても阻害の傾向は見られ,その活性中心は,細胞の接着・走化性・マトリゲル浸潤を阻害するHGK-配列の後方に存在している可能性が出てきた。 HGK-配列に結合する細胞表面のタンパク質の検索では,ドメイン5-Sepharoseに結合したタンパク質を,HGK-配列を含まないペプチドで洗ったのちHGK-配列を含むペプチドを流し,特異的に溶出されたタンパク質を同定した。細胞の接着・移動に関係するタンパク質としてα-アクチニン4が検出された。この結果は,ドメイン5やペプチドが細胞内に取り込まれて直接阻害作用を示すのか,アクチニン4が結合した受容体が存在し,その受容体を阻害することで作用するのかを検討する必要性を示している。
|