メダカは幅広い温度耐性を持ち、多くの温度感受性変異が得られる可能性を秘めているが、今まで実際に同定されているものはほんの数例である。変異p53の温度感受性を鋭敏に測定するために、放射線照射後の鰓細胞に出現する小核(micronuclei)の数、および、real time PCRによるp21の発現誘導測定の系を構築した。野生型の魚を用いて、各種放射線線量と培養温度におけるキネティックスを決定した。ENUによりp53のDNA結合領域に誘発されたN221D、 N221S、 S223P変異体の凍結精子を人工授精した。生じたヘテロ接合体は、p53遺伝子以外の変異を取り除くために、野生型に3回戻し交配をした後、兄妹交配をしてホモ接合体を得た。この仔にγ線10Gyを照射して、20℃、28℃、36℃の3種類の温度により培養し、RNAを抽出してp21の発現誘導をreal time PCRで測定した。現在、観測された変化が有意なものかどうか、さらなる検討を加えている。 前記3種類の変異はENUによって偶然に誘発されたアミノ酸置換変異であるので、確実に温度感受性変異体を得るために、文献上哺乳動物で温度感受性になることが知られているアミノ酸置換を導入したBACクローンを、p53ノックアウトメダカに導入した。ナショナルバイオリソースから、プロモーターを含めてp53遺伝子座をカバーするBACクローンを入手し、Neal Copelandの大腸菌内での相同組換えを用いたBAC改変技術を用いて、I127A、 A122V変異を導入した。さらに、トランスジェネシスの効率を高めるために、ベクターのバックボーン部分にI-SceI部位を導入した。このコンストラクトをp53ノックアウトメダカの受精卵にI-SceIヌクレアーゼとともにインジェクションした。
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