ゼブラフィッシュやメダカといった小型魚類は、脊椎動物でありながら、取り扱いが容易なモデル動物として汎用されている。メダカは、4℃から40℃までの温度変化に耐えることができるが、この性質と、近年開発された特定遺伝子破壊体を得る変異メダカ作製の系を利用して、本課題では、温度感受性のタンパク質を個体レベルで発現する変異メダカの作製を目的とする。また、魚類タンパクに対して交差性のある抗体は数が少ないため、抗体産生の系を立ち上げる。 1、p53変異体の温度感受性の評価 種間で高度に保存されているp53のDNA結合領域の変異体三種(N221D(221番目のアスパラギンがアスパラギン酸に変化した変異体、以下同様)、N221S、S223P)を野生型メダカに4回以上戻し交配した上で、兄妹交配によりホモ化した。放射線照射前後の発現量に差があるp21遺伝子をレポーターとして、これら変異体p53の転写活性をリアルタイムPCRにより測定した。また、哺乳動物のp53変異体で温度感受性になることが試験管内で知られている、I127AおよびA122V変異をp53欠失メダカに導入した。 2、抗体の作製 減数分裂時の染色体分配に問題があるBLMヘリカーゼ遺伝子欠損メダカを詳細に解析するために、メダカのBLMヘリカーゼ、および、Spoll、Dmcl、Mlhlタンパク質にHisタグを付けたものを大腸菌で発現させ、ニッケルカラムを用いてタンパクを精製した。BLMとDmclは可溶性画分に分離したが、Spollは不溶性画分に分離した。また、Mlhlは発現量が極めて少なかった。Mlhl以外の精製タンパクをモルモットに免疫し、それぞれ特異性の高い抗体を得ることができた。これらは、ウェスタンブロットに使用できるのみならず、減数分裂時の染色体標本の免疫抗体染色にも使えることがわかった。
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