最近樹立したボスホリパーゼB/リパーゼ(PLB/LIP)欠損マウス(mPLB-/-)を用いてPLB/LIPの小腸における機能解析をすすめた。前年度開発したHPLC/MSに適した高極性脂質抽出法をを用いることにより、分析の妨げになる蛋白質や極性化合物を除去でき、HIPLC/MS分析に適した状態で効率良く高極性脂質を再抽出することが可能になった。この方法で抽出した脂質を分析するために前年度は、高感度二次元HPLC/MSシステムを検討したが、詳しく検討すると一次元順相クロマトグラフィーのみで高感度にガングリオシドなどの高極性脂質を分析することができることが判明して、その成果を報告した(Tanabe et al.)。今年度の研究によりこれまで樹立できなかったホモ欠損体を得られることができた。これまでに樹立したヘテロ接合体で見られた小腸粘膜の分化異常はセレクションのために導入したNeo遺伝子の影響が主であることが判明した。新たに作成したホモ接合体の表現形は以下のようであった。1.mPLB変異体の、仔の遺伝型の比率はメンデルの法則に従っていた。2.mPLBにはsplice variantsが存在し、mPLB-/-にも少量のmPLBが残っている可能性がある。3.Western BlotではmPLB-/-の約160kDのmPLBはほとんど消失していた。4.回腸におけるPLA2活性を調べたところ、mPLBによるCa^<2+>非依存性のPLA2活性が大きく低下していた。また、その代わりにCa^<2+>依存性のPLA2活性が増加していた。5.高脂肪食による体重増加に遺伝型に相関した著しい変化は見られなかった。ホモ接合体の小腸脂質分解吸収異常や粘膜における脂質代謝異常をすでに開発した二つのHPLC/質量分析システムで非極性から高極性に渡る範囲で総合的に検索している
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