研究概要 |
8-ニトログアノシン3',5'-サイクリックーリン酸(8-ニトロcGMP)は、一酸化窒素生成に依存して細胞内に生成する新規な環状ヌクレオチドであり、蛋白質のチオール基に対して付加反応を起こし、蛋白質8-チオールcGMP付加体を形成する(蛋白質S-グアニル化)。本研究では、8-ニトロcGMPとチオール基との反応メカニズムを解析するとともに、その細胞シグナルへの影響を解析することを目的としている。平成20年度は、蛋白質S-グアニル化について、質量分析に基づく解析手法の検討を行った。タンパク質モデルとして、組換えKeap1を用いた。すでに我々は、Keap1がS-グアニル化の細胞内標的タンパク質の一つであることを明らかにしている(Nature Chem.Bio1.,3,727,2007)。組換えKeap1を8-nitro-cGMPと反応させ、S-グアニル化Keap1を得た。それをトリプシン消化し、S-グアニル化システインを含むペプチド断片を作成した。抗S-グアニル化抗体を結合した抗体カラムを作成し、それを用いてS-グアニル化ペプチドを選択的に精製・濃縮した後、質量分析に供した。質量分析は、MALDI-TOF-MSおよびLC-ESI-MSにより行った。推定分子量と一致していたペプチドについては、さらにMSMS解析を行い、S-グアニル化ペプチドであることを確認した。特に、S-グアニル化ペプチドでは、cGMP構造に特徴的で優先的な解裂・脱離が起こっており、これを指標にS-グアニル化ペプチドを容易に同定できることが分かった。本手法は、新しい翻訳後修飾である蛋白質S-グアニル化の解析に有用であることが示された。
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