研究課題/領域番号 |
19590314
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
秋山 伸一 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (60117413)
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研究分担者 |
車 暁芳 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (10437973)
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キーワード | Vault / MVP / LRP / 高浸透圧 / P38 / ストレス / Akt |
研究概要 |
Vaultは強大なオルガネラであるにもかかわらずその機能がほとんどわかっていない。Vaultは、その70%以上を占める100kDaのmajor vaulr protein(MVP)のほかに、240kDa (p240)、193kDa (p193)の蛋白質と1種類のvault RNA (vRNA)から構成されている。 抗癌剤耐性との関連性が考えられているLRPは、MVPと同一蛋白質であることがわかった。 我々はMVPのノックアウトマウスが明らかな病態を示さなかったことから、通常とは異なるストレス環境下でvaultが必要とされているのではないかと考えて、様々なストレスを細胞に加えMVP発現を調べることにより、DNAを傷害する薬剤やUVがMVPの発現を亢進すること、高浸透圧がMVP発現を誘導することをいち早く見出した。 今回の研究では、高浸透圧ストレス下でのMVPの発現亢進のメカニズム、MVP発現亢進が細胞をストレスから防御するのではないかと考えて、その分子機序を調べた。 培地にsucroseまたはNaC1を添加してヒト大腸癌SW620細胞に高浸透圧ストレスを加えると、加えた化合物に関係なく浸透圧依存性に、時間依存性にMVP mRNA、MVP蛋白質が増加した。 高浸透圧によりMVPプロモーターの活性が上昇した。P38MAPKの特異的な阻害剤SB2035801で細胞を処理すると、高浸透圧によるMVPの誘導が阻止された。このことは高浸透圧ストレスによるMVPの発現亢進がp38を介して行われていることを示唆している。高浸透下でのMVPの役割を明らかにするためにSW620細胞のMVP遺伝子をRNA干渉(shRNA)によりノックダウン(KD)すると、細胞は高浸透圧に対してより感受性になり、アポトーシスが亢進した。さらにMVP遺伝子をノックダウンすることにより、高浸透圧によるリン酸化Aktの増加が妨げられることを見出した。現在、どのようなメカニズムで高浸透圧ストレスがAktを活性化するのか、その時、どのような情報伝達経路のステップでMVPまたはvaultが関与しているのかを明らかにしようとしている。これらの研究によりMVPがストレスに対して細胞を防御する役割を担っていること、その防御の分子レベルでのメカニズムを明らかにする。
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