研究課題/領域番号 |
19590314
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
秋山 伸一 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (60117413)
|
研究分担者 |
車 暁芳 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教 (10437973)
|
キーワード | Vault / MVP / 高浸透圧 / PI3K / ARK / PTEN / アポトーシス |
研究概要 |
Vaultの分子量は13MDaで、現在知られている中でもっとも巨大なRNAタンパク質複合体である。しかしながら、Vaultの生理機能はいまだに不明である。 本研究では、高浸透圧刺激によりMVPの発現が誘導されることを明らかにした。そのMVPプロモーター活性は、SP1をノックダウンすることにより抑制されたが、P53阻害剤であるPifithrinはMVPのプロモーター活性に影響を与えなかった。MVPの発現は、腎臓や腸管などの恒常的に浸透圧変化の大きい組織において認められている。腎臓の腎髄質細胞は、高濃度のNaC1にさらされ、500mM以上の塩濃度になることもある。高い塩濃度はアポトーシスを誘導するが、細胞はvaultの発現を亢進することにより、高浸透圧によって誘導されるアポトーシスを回避している可能性がある。高浸透圧条件下で、MVPが存在するとAktのリン酸化が亢進し、PI3Kの特異的阻害剤LY294002によりSW620細胞のアポトーシスが増加した。vault/MVPがPI3K/Akt経路を活性化することにより、高浸透圧刺激によって誘導されるアポトーシスから細胞を防御することが示唆された。 MVPがAktの活性化を調節するメカニズムの一つに、MVPとPTENとの相互作用が考えられる。PTENは、細胞膜においてPIP_3をPIP_2に脱リン酸化するため、PI3K/Akt経路の負の制御因子として知られている。また、PTENはp53と同様に癌抑制遺伝子としても広く知られている蛋白質である。MVPは子宮頸癌HeLa細胞において、PTENのC2ドメインと相互作用することが確認されている。さらに、PTENは核と細胞質の両方に局在しており、PTENの核の移行はMVPを介しているとの報告がある。MVPはPTENの機能を阻害し、Aktを活性化することによりアポトーシスを抑制する可能性がある。現在MVPによるPTENの細胞内局在の変化とAkt活性化、アポトーシス誘導との関連を調べている。
|