ST2タンパク質の機能部位を特定するため、ST2タンパク質の野生型と変異体の発現と精製を試みた。同時に、精製した野生型ST2タンパク質を用いて、ST2の細胞内シグナル伝達解析系の最適化を行った。 【ST2タンパク質の調製】 野生型ST2タンパク質(アミノ酸配列に基づく分子量37kDa)、シグナル配列を欠損した変異体、9つある糖鎖修飾部位のアスパラギンをすべてアラニンに変えた変異体の発現ベクターをHBK293細胞にトランスフェクションしたところ、それらタンパク質の発現を確認できた。培地中に分泌される野生型については、付加してある6xヒスチジンタグを利用してNi-NTAカラムによる精製を進め、溶出画分について銀染色およびウエスタンブロッティングによる解析を行ったところ、約60kDaに相当する高純度のST2タンパク質が得られた。精製したST2タンパク質は、グリコシダーゼ処理により分子量が37kDaに変化したことから、糖鎖修飾型タンパク質であることが確認された。これは内在型のST2と同様の修飾を受けた組み換えタンパク質の発現と精製に成功したことを示す。一方、変異体ST2は培地中に分泌されずに細胞内にとどまること、また、細胞抽出液のウエスタンブロッティングによる解析では分子量が37kDaに相当することから、糖鎖が結合していないと考えられた。以上のことから、糖鎖が未結合のST2変異体タンパク質の発現が確認された。現在、野生型と同様にNi-NTAカラムによる精製を進めている。 【ST2の細胞内シグナル解析系の最適化】 これまで、ST2の細胞内シグナル伝達解析系では大量の精製タンパク質を必要としたが、より効率よく解析を進めるため、解析系のスケールダウンを検討した。具体的には、6ウェル、12ウェル、24ウェル、96ウェルの培養プレートを用いた系で、従来法の10cm培養プレートを用いた系の結果を再現できるか検討を行った。これまでのところ96ウェルを用いた系では、再現性は得られていないが、その他のプレートを用いた系について検討中である。
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