研究概要 |
本研究目的は,第一にビタミンK依存的なγ-カルボキシラーゼの発現量が高い肝臓における作用およびそれに伴う病態に焦点を絞り,分子レベルでビタミンKおよびγ-カルボキシラーゼの作用メカニズムについて検討する.第二の目的は,ビタミンK依存的なγ-カルボキシラーゼの分子基盤を解明することで,局所的なカルシウム代謝異常から生ずる病態との関連について検討する,ビタミンK依存的GGCXの肝臓におけるKOマウスを作製した結果,出産した産仔の40%程度が生後200日前後までは生存することが判明し,急激な出血を伴う血液凝固異常により死亡することが示唆された.このことはGGCXの肝臓における標的因子群と知られる,血液凝固制御因子である(FactorII,VII,IX,X,プロテインC,S,およびZ)もしくはそれ以外の未知の修飾タンパク質の,GGCXの活性欠損に伴うGla化修飾ができず止血経路が作用しないことが原因として考えられた.GGCX KOマウスでは,血液凝固異常を呈することから,トロンビン時間および血液凝固因子群の中でもマウスで活性測定が可能な項目について検討した結果,トロビン時間の延長と,凝固因子群の活性が顕著に減少していることが判明した.ことのことは,ビタミンK欠乏の病態およびワーファリン処置した際のサイドエフェクトを評価する上でも重要なモデルと考えられる.それ故,本研究より受けた研究費により解析したGGCX KOマウスは,将来的に血液凝固制御の作用機構の解明や血栓症発症の新規分子メカニズムの解明を目指す研究,およびその病態の診断・創薬・治療法への開発に有用と考えられる.
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