研究課題
疾患マーカー探索を目的とした発現プロテオミクスにおいては、主に蛋白存在量の増減が重視されてきたが、蛋白質の機能変化に関与する翻訳後修飾については、あまり考慮されてこなかった。本研究では、蛋白量の増減に加えて、複数の翻訳後修飾を同時に検出できる手法を開発し、糖尿病診断の新規マーカー候補を探索することを主な目的としている。これを実現する基本技術は、(1)蛋白成分の分離精製を目的としたアガロースニ次元電気泳動(2-DE)法、(2)ゲルからPVDF膜に転写するウェスタンブロッティング(WB)法、(3)各種翻訳後修飾を特異的に認識する特異抗体標識量子ドット法、および(4)蛍光波長の異なる量子ドットを別々の画像として検出できる分光技術の4つである。本研究ではこれら4つの技術を確立し、それを糖尿病モデルラットの各組織に含まれる蛋白質成分に応用することに成功した。すなわち、糖尿病ラット組織から抽出した蛋白質成分をアガロース2-DE法によって分離し、WB法でPVDF膜に転写した。カルボニル化(酸化傷害)、ユビキチン化(蛋白分解シグナル)、4-ヒドロキシ-2-ヘキサナール(HHE)化(糖化)、メチルグリオキサール(MG)化(糖化)を分析したが、そのうち最大4種類の同時多重検出に成功した。また、糖尿病ラット骨格筋において、糖尿病発症に伴い(1)アクチンのカルボニル化、HHE化、MG化が著しく増加すること、(2)アクチンのカルボニル化が増加してもユビキチン化はまったく検出されないこと、などが明らかになった。以上のことから、糖尿病発症に伴うアクチンの翻訳後修飾変化は、糖尿病の進行状況を見極める指標にたると考えられる。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Hepatology 48
ページ: 519-530