染色体の微小欠失や重複により発症する疾患はゲノム病とよばれ、特異的重複配列間の非アレル間相同組換えにより引き起こされると考えられている。22q11欠失症候群は3000人に1人というゲノム病の中では頻度が高い疾患である。本研究では、その染色体領域にDNAの二重鎖切断(DSB)を誘発するような配列が存在しているのではないかと仮説をたてて実験を遂行した。 まず、DSBを誘発する原因がDNAの高次構造形成によるものではないかと考え、配列から候補配列を検索した。そして、高次構造を形成するとプラスミドDNAは電気泳動パターンが変化することから、候補配列をプラスミドDNAベクターにクローニングし、電気泳動解析をおこなった。その結果、ある候補配列では、構造変化を示す電気泳動像が得られた。また、その配列はT7エンドヌクレアーゼにより切断されたことから、十字架型の高次構造を形成することが推測された。次に、配列が染色体欠失を引き起こすことをin vivoで証明するために、候補配列を酵母の染色体に組み込んだ酵母モデルを作成した。TRP1遺伝子内に候補配列を導入し、その下流にもTRP1遺伝子を配置し、その間の欠失を検出した。重複配列内にあるほかの配列と頻度を比較すると、候補配列の染色体欠失の頻度は有意に高かった。以上の結果から、本研究で検索した22番染色体上の重複配列内の特定の配列は、高次構造を形成することでDSBを誘発し、染色体欠失を誘発していることが考えられた。
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