研究課題
疾患への感受性・抵抗性には個体差があるが、ことに個体の免疫応答性には大きな個体差があり、この個体差の形成には環境要因と遺伝要因の両者が関与することから、NKレセプター、ことにNKG2レセプター群とそのリガンドに着目し、遺伝子多型解析を行った。NKG2ファミリーのうち、唯一の活性化レセプターであるNKG2DはULBP/RAET1遺伝子群をリガンドとするため、タイ人におけるULBP1~6の各遺伝子のレセプター結合ドメイン部分の多型を解析したところ、ULBP4において7種の多型(6種の非同義置換多型)が見いだされた。また最近同定されたULBP6においても7種の多型(4種の非同義置換多型)を認めた。これに対して、ULBP1,ULBP3各遺伝子では多型は認められず、日本人とほぼ同様の遺伝子多型分布であることが明らかとなった。一方、ULBP5ではレセプター結合ドメインにおける1アミノ酸残基の違いがNKG2レセプターとの結合に影響することが報告されており、また、ULBP6は腫瘍細胞上皮で強発現し、その発現量の違いがNK細胞による標的細胞の殺傷機能に影響を与えていることがつい最近報告されたが、本研究で明らかにしたULBP/RAET1遺伝子群の多型がNKG2D機能の差異に関与する可能性があるため、今後さらに検討する。これとは別に、KIRレセプターのうちKIR-3Dについて、インド人集団サンプルを用いて3DL1/3DS1タイピングを行い、前年度までに行った日本人集団での結果と比較した。KIR-3DS1は活性型、3DL1は抑制型レセプターをコードするが、インド人一般集団中のKIR3DS1頻度は48.5%と日本人の35%よりも高く、活性型レセプターを持つ割合が高いことが示された。以上のことから、NKレセプターとそのリガンドの両者に多型が存在することが明らかになった。
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