申請者は中心体の再複製を抑制する遺伝子を細胞工学的に探索し、中心体の再複製を抑制する活性を持つヒト染色体を微小核融合法により明らかにした。具体的に述べると、マウスA9細胞は、正常細胞であるが、ヌードマウスに造腫瘍性を示すことから、前癌状態の細胞株であると言える。この細胞の中心体は正常であるが、DNA複製阻害剤であるハイドロキシウレア処理を行うと時間依存的に高頻度(約40%)に中心体の過剰複製が見られることを発見した。このことから、マウスA9細胞は中心体の複製系に異常を来していることが考えられた。次に、引き続きヒトの染色体を各1本持つA9細胞ライブラリーの一部(第1番染色体、第5番染色体、第8番染色体、第10番染色体、第11番染色体、第13番染色体、第15番染色体、第16番染色体、第17番染色体、第20番染色体)を用いておのおのDNA複製阻害剤処理したところ、第8番染色体、第15番染色体、第17番染色体を持つA9細胞群は、中心体の過剰複製が抑制されることをつきとめた。これらの染色体を、中心体の過剰複製を誘発できるヒト骨肉腫細胞であるU2OS細胞におのおの導入し、中心体の過剰複製を抑制する活性を調べたところ、ヒト第8番染色体が最もその活性が高いことを明らかにした。現在、radiation hybrid mapping法により、ヒト第8番染色体上の、中心体の過剰複製を抑制する活性を持つ部位を限局する作業を行っている。
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