研究概要 |
マイクロサテライトマーカーを利用したヒトゲノムの連鎖地図は、1996年にCEPH家系を用いた200減数分裂レベルのものが作成され、その後5,000個のマーカーと1,000の減数分裂を含む家系を用いて高密度化が計られた。この1,000減数分裂レベルの連鎖地図では、従来の連鎖地図と比較して大幅な平均解像度の向上がなされている。このような連鎖地図の解像度と信頼区間の改善は、ヒト疾患の関連遺伝子座同定を成功させるための主要な進歩の一つである。ところがこの1,000減数分裂レベルの連鎖地図では、祖父母を含まない核家族を中心に遺伝子型判定を行ったためホモ接合体アリルの由来を判定できず、多くの場合で解像度も信頼区間も低くなってしまっている。その解決には、多くの減数分裂を含む大家系の利用と、集団中でのヘテロ接合率が高いマーカーを用いることが必要である。申請者はこれまで、東アジアを中心とした多くの民族集団を用いて人類遺伝学研究を行い、その結果東アジアに多くの遺伝的隔離集団を見出している。また申請者は日本人集団で多型を示す約30,000個のマイクロサテライトマーカーをヒトゲノム中に設定した。そこで、これらの研究成果を発展させ、理論的には30,000個のマイクロサテライトマーカーで、各家系100の減数分裂を含む50家系を用いた連鎖地図を作成することが可能である。そこで上述したモンゴル人隔離集団家系を用い、段階的に連鎖地図の高解像度化を行い、最低でも2,000減数レベルの連鎖地図を完成させることを具体的な目標とした。本年度は、約30,000個の多型マイクロサテライトマーカーのうち、モンゴル人集団で充分なヘテロ接合度をもつものを追加選別した。また、前年度までに行った実験に対してさらに家系の構成メンバー数と家系数を増やしてタイピングを行い、連鎖地図の密度を上げることに成功した。
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