研究課題
乾癬の感受性遺伝子を同定する目的で、当研究室において独自に開発した全ゲノムに配置した約30,000個のマイクロサテライトマーカーを用い、遺伝的関連解析を実施した。その結果、極めて有意な頻度差を示すマーカーが存在する3領域を見出すことに成功した。そしてこれら3領域の内、最も関連が強いマイクロサテライト(P value:6x10-9)が存在した領域を中心に今年度は研究を進めた。このマイクロサテライトの下流995bpにGPCR(G protein-coupled receptor)遺伝子が存在し、さらに乾癬と関連するSNPがその周辺に認められないことから、この遺伝子が乾癬感受性遺伝子であると疑われた。しかしながら、この遺伝子はその塩基配列ならびに推定されるアミノ酸配列からその名が付されているのみで、実験的な解析はほとんど行われていない。そこでまず、この遺伝子の発現量を各種組織由来のRNAを用いて、定量的RT-PCRを実施し結果、皮膚、さらにCD4+細胞での発現が確認された。続いて同一患者無疹部と皮疹部のペアーを8個体用い、同様に発現量の調査を行ったところ、すべての個体において約2倍から10倍、無疹部において発現量が増加していた。したがって、おそらく乾癬発症に対し抑制的な効果がこのGPCRには存在すると考えられた。一方、核酸レベルではなくタンパクとして機能を追及するには、これに対する抗体が必須となる。そこでこのGPCR特異的なマウスモノクローナル抗体の作製を実施した結果、特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ(LK16-3)を1クローン確立することに成功した。続いてこのLK16-3抗体を用い、健常者ならびに患者皮膚切片に対し、免疫組織染色を実施した結果、健常者表皮ならびに患者無疹部の顆粒層に特異的な染色が認められる一方、患者皮疹部では表皮に染色が認められず、これは前述の定量的RT-PCRの結果と一致していた。表皮には他のGPCRファミリーがある種の抗菌ペプチドとインタラクトし、それがinnate host defenseやadaptive immunityへ影響を与えうることが知られている。今回見出したGPCRが同様な機能を有している可能性もあり、今後の解析が期待される。
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