本研究課題に関する、平成21年度の主な研究成果は下記の如くである。 1.アロマターゼ阻害剤エキセメスタンのアンドロゲン作用。乳癌培養細胞に各種アロマターゼ阻害剤を添加しアンドロゲン受容体(AR)活性を測定した結果、アンドロゲン様構造を有するエキセメスタンにおいて活性型アンドロゲンDHTに対し1/3程度のAR活性を認めた。乳癌培養細胞にDHTあるいはエキセメスタンを添加後網羅的マイクロアレイを行った結果、各々で誘導される遺伝子は80%程度が共通であった。従ってエキセメスタンはDHTに類似した作用を直接的に示すことが明らかになった。昨年度我々は17βHSD2が代表的なアンドロゲン応答遺伝子であることを示したが、17βHSD2はエキセメスタンによっても経時経濃度的に発現が誘導された。 2.乳癌細胞おけるアンドロゲン作用とエストロゲン作用の協調関係。乳癌培養細胞におけるAR活性はエストロゲンを添加することで有意に減少し、17βHSD2の発現も有意に減少した。一方エストロゲン受容体(ER)活性はDHT添加では有意な変動がみられなかった。 以上の実験結果より、1)乳癌組織ではアンドロゲンが十分にあっても強いエストロゲン作用の結果アンドロゲン作用が抑制されていること。2)乳癌患者にアロマターゼ阻害剤を投与するとアンドロゲン濃度の上昇やエストロゲン作用の低下によってアンドロゲン作用が強く発揮されるようになること。3)エキセメスタンでは更に直接的なアンドロゲン作用を有すること、4)17βHSD2は乳癌組織のアンドロゲン作用を知るよいマーカーであること等が示された。
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