研究概要 |
1.97例の胆嚢癌について免疫染色とFluorescence in situ hybridization(FISH)を行い,3例にMycの遺伝子増幅を認めた。このうちの1例は粘膜癌であり,MycとERBB2がHSR型,MycとEGFRがDM型の同時増幅をしめしていた。他の1例では,Mycが単独でHSR型増幅を示し,残りの1例ではMycとEERBB2軽度の増幅(コピー数9以下)がみられた。これらの結果はMycの遺伝子増幅によって染色体の不安定性が惹起され,2次的にERBB2やEGFRの遺伝子増幅をおこしたことを示唆すると考え,"Gene amplifca of MYC and its coamplification with ERBB2 and EGFR in gallbladder adenocarcinoma"として論文を投稿中である。 2.86例の乳癌について,塗沫細胞を用いたFISHによるMyc遺伝子の増幅と,Western blotによるMyc蛋白の過剰発現に検討を行った。Mycのシグナル数:セントロメア8のシグナル数=増幅比とし,増幅比2.0以上を高度増幅,0.8-1.2を軽度増幅,Myc遺伝子のコピー数6以上を高度ポリソミー,3-5を軽度ポリソミーとした。結果は高度増幅10例,軽度増幅15例,高度ポリソミーが58例,軽度ポリソミー21例,ダイソミーが25例,FISH不成功例4例であった。Myc蛋白の過剰発現は16例に認められ,遺伝子増幅と蛋白過剰は有意な相関をしめした。 3.フォルマリン固定・パラフィン包埋乳癌組織75例を用いた免疫染色では,ERBB2蛋白の過剰発現は16例そのうち14例にERBB2遺伝子の増幅をみとめた。ERBB2遺伝子とMyc遺伝子の同時増幅は2例に認められたが,両者に有意な相関はなかった。
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