研究概要 |
これまで,comparative genomic hybridization(CGH)を用いて胃癌の系譜解析を行ってきた。その結果,低分化腺癌(POR)で腺管成分(TC)を含むものは,その2/3が腺管腺癌(TUB)に由来し,残りの1/3と腺管成分を含まないものが印環細胞癌(SIG)に由来すること,粘膜内に限局したTUBでは8q-と17p+が見られたのに対して,TCを含むPORでは8q+と17p-が見られ,両者は染色体上の系譜が異なることを報告してきた。TCを含むPORに進展しうるTUBのゲノム構成を明らかにするために,今年度は,(TCを含むPORで高頻度に野生型の不活化を認める)TP53の存在する17pに焦点をあて,免疫染色でp53の過剰発現の見られたTUBを用いて,17pのコピー数の変化をCGHとアレイCGHで検出した。分化型早期胃癌49例中26例にdiffuseパタンを示すp53の過剰発現が見られた。そのうち2例の粘膜内癌と1例の粘膜下浸潤癌でレーザmicrodissectionによる腫瘍内の複数サンプリングを行い,DNAを抽出,精製後,CGHおよびアレイCGHを行った。その結果,粘膜内癌の2例ではCGHで17pのgain,アレイCGHでTP53のコピー数増加を認めた。一方,粘膜下浸潤癌の粘膜部では17pのlossがみられた。粘膜下部分では,17pのlossは見られなかったが,アレイCGHによるTP53のコピー数とともに,microsatellite解析による17pl3のヘテロ接合性の喪失の有無を,現在検討中である。次年度は進行癌へ解析範囲を広げる予定である。
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