原発肺腺癌切除後再発に対してGefitinibを投与された21症例について、手術時に採取された癌組織を用いてEGFR遺伝子解析およびEGFR・リン酸化EGFRの発現解析を行った。なお、本研究は、大分大学および大分県立病院のゲノム研究倫理委員会の承認と、対象患者の同意を得て行った。 1.EGFR遺伝子変異とGefitinib感受性 PR(Partial response)では9例中全例(100%)、SD(Stable disease)では6例中2例(33.3%)で検出された。PDでは6例中1例も検出されなかった。EGFR遺伝子の変異はGefitinib感受性と有意に相関していた(P=0.0002)。 2.EGFR発現とGefitinib感受性 全21症例で、EGFRの過剰発現を認め、EGFR発現とGefitinib感受性には有意な相関はみられなかった。 3.EGFRのリン酸化とGefitinib感受性 EGFR蛋白質の992番目のチロシンのリン酸化を特異的に認識する抗体(pEGFR Tyr992抗体)を用いた染色結果が治療効果ときわめてよく相関していた(P=0.0011)。PRは全例陽性(9/9)であるのに対し、SDおよびPDで陽性を示すのは、それぞれ6例中2例、6例中1例のみであった。 以上の結果から、pEGFR Tyr992の免疫組織化学は、EGFR遺伝子の変異解析を代替しうる有効なGefitinib感受性予測検査と考えられた。なおこれまでの研究実績は学術雑誌に報告している(Hum Pathol.2008 Mar;39(3):316-23.)。
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